読み書き速度ではSSDにかなわないHDDですが法人向けや一般消費者向けメインストレージとしてはHDDもまだまだ現役です。
かつては微細化やプラッタの回転数を上げて読み書き速度を向上させてきましたが、近年ではキャッシュ容量を増やすことで性能向上し、次世代のHDDではさらに別なアプローチで大幅な高速化を目指しています。そこで今回はHDDの高速化技術と新技術についてご紹介します。
プラッタの高回転による性能向上は2010年頃が最後
HDDは磁性体を塗ったプラッタを回転させて読み書きするため、より早くプラッタが回転した方が性能向上に繋がります。
そこで一般的な5400rpmや7200rpmよりも早い10000rpmでプラッタが回転するハイエンド向けHDDが登場しました。しかし発熱量の多さと耐久性の問題から生産されなくなり、2010年以降は緩やかに終了しました。
読み書き速度を向上させるためにキャッシュ容量を増加しSSDとのハイブリットが誕生
HDDは読み書きするデータを一時的にキャッシュするメモリ領域があり、かつては8MBや16MBが主流でした。しかしキャッシュ容量を増やすことで書き込み速度を向上できるため現在の主力HDD製品では256MBや512MBが一般的です。
そして更なるキャッシュ先として低容量のSSDを内蔵したハイブリッドHDDが誕生しました。データの先読みと書き込みデータの一時保存をSSDに行い、順次プラッタへ反映することで速度を向上させています。「HDDとSSDの違いとは?価格と性能に大きな差があります」で解説しましたが、これからはハイブリッド型も選択肢に入ってきます。
Optane MemoryはハイブリッドHDD進化形
SSDを内蔵したハイブリッドHDDはノートパソコンや一部のゲーミングパソコンで採用されましたがSSDの空き容量を使い切るとHDD本来の性能へ戻るという欠点がありました。
そこでマザーボード側でSSDとHDDを融合させ、ユーザーが必要な容量のキャッシュ用SDDを用意することで実用性を向上させたOptane Memoryに代表される方法が現在の主流です。Optane Memory専用のSSDは効果ですがその分、効果は大きく一般消費者向けのメーカー製パソコンでも採用が進んでいます。
次世代のHDDでは2本の読み取りヘッドで更なる高速化を目指す
プラッタ上に散らばったデータは読み書きヘッドが移動しながら処理しますが、プラッタ一枚につき表面と裏面にそれぞれひとつのヘッドしかありません。
そこでSeagateが開発を進めているのは二本のヘッドが同時にプラッタへアクセスする「MACH.2」です。読み書きを行うヘッドが二本になることで速度も2倍になり、仮にMACH.2採用HDD2台をRAID0構成にすれば4倍もの性能を得ることができます。
SeagateはこのMACH.2とアシスト記録のHAMRを採用した次世代HDD開発を進めており将来的にはコンシューマ向けラインナップとして登場する見込みです。今後は「ゲーミングPC向けデータ用HDDの選び方」でこのようなHDDが主流になっていくかもしれません。
まとめ
HDDの高速化はSSDやOptane Memoryの登場であまり注目されなくなりましたがNASやサーバーではまだまだのHDDの高速化は需要があります。今後は更なる大容量化はもちろんHDD単体での読み書き性能向上も期待できそうな先進的な技術開発が進みユーザーに製品が届く日もそう遠くはなさそうです。