ゲーミングデスクトップパソコンは一般的なパソコンよりも冷却性能を必要とする為、放熱フィンが大型されているパーツを多用します。その中でもCPUクーラーとグラフィックボードは極めて重く1kgを超えるハイエンド製品も珍しくありません。
これらのパーツはただ取り付けただけではちょっとしたことで脱落や接触不良といったトラブルを起こしやすく、重量を分散させる特殊パーツが様々なメーカーからリリースされています。そこで今回はゲーミングデスクトップパソコンで多く採用されている重量級CPUクーラーを支えて守る特殊パーツについてご紹介します。
1kgを超えるCPUクーラーはマザーボードの反りやCPU破壊のリスクがある
「CPUクーラー・GPUクーラーの役割と空冷クーラーの選び方」でも解説したように、Intel系マザーボードで一般的なプッシュピン方式のCPUクーラーは支える力が弱く、大型の放熱フィンやヒートパイプを採用した重量級CPUクーラーではバックプレート方式が多く採用されています。
バックプレート方式は文字通りマザーボードの裏面に補強用の金属板を固定し、マザーボードをバックプレートとCPUクーラーで挟み込むことで支えています。それでもマザーボードの固定が甘い場合はマザーボード基板が反ることもあるため完璧とは言えません。
さらにマザーボード基板は回路が幾層にも重なっているため反りによるダメージは故障や不具合のリスクを高め、メーカー保証が受けられなくなるという危険もはらんでいます。そしてCPU基板も世代を重ねる度に薄くなっており、重いCPUクーラーに耐えきれず破損した事例もあります。
重量級CPUクーラーの問題は重さと形状にある
CPUクーラーの周囲にはメインメモリやチップセット用のヒートシンクがひしめき合っており、リテールCPUクーラーよりも大きな重量級CPUクーラーではパーツの干渉を避けるために全高を高く設計しています。
この形状はマザーボードを横に寝かせるキューブ型等のパソコンケースでは問題ありませんが、現在主流のマザーボードが縦置きのパソコンケースでは影響が出てきます。
具体的にはCPUクーラーの固定部分を支点として大きくせり出したヒートシンクの重量がテコの原理でマザーボードとCPUを強力に押す形になり、CPU基板やマザーボード上のCPU用ピンヘッダーを破壊・マザーボード基板を反らせてしまいます。
そして輸送中など上下方向の運動が起きる度にバーツへ強力に負荷がかかり、CPUクーラーそのものが脱落するという事故につながってしまいます。
パソコンケースからワイヤーでCPUクーラーを吊るスタイルから突っ張り棒スタイルへ
このような問題が指摘され、実際にパーツを破壊する事例が出たことでスプリングでCPUクーラーの力を緩和する製品や過度の圧力からCPUを守る金属製カバー等が相次いでリリースされました。
その中でもCPUクーラーの上部を金属ワイヤーで吊ることで重量バランスや落下リスクを改善する方法が一時期主流になりました。しかしパソコンケース側への固定方法など導入が簡単ではないことから現在では姿を消しています。
そこで現在主流となっている方法はグラフィックボードと同じく突っ張り棒です。一本の突っ張り棒でCPUクーラーとグラフィックボードを両方とも支えられる製品ならエアフローや外見にも影響がなく簡単に導入できます。
CPUクーラー自体もバックプレート方式にスプリングやゴム素材を組み合わせ、過度な力を抑制できるタイプが主流になり以前よりもトラブルはおきにくくなりました。
CPUクーラー自体の選び方については「CPUクーラー・GPUクーラーの役割と空冷クーラーの選び方」をご覧ください。
まとめ
大手パソコンメーカーではCPUクーラーやグラフィックボードの脱落を防止する構造のパソコンケースや追加パーツを開発・採用していますがBTOパソコンや自作パソコンでは独自にトラブルを予防する必要があります。
突っ張り棒なら安価に解決でき、後々パーツをアップグレードする際も再調整して使い続けることも可能です。もしハイエンドグラフィックボードや高性能なCPUクーラーを使っている際は導入を検討してみることをお勧めします。
CPUクーラーよりもグラフィックボードのほうが重いこともあります。そんな時には「ハイエンドグラフィックボードを支えてマザーボードを守る特殊パーツ」を参考にしてください。