1995年に策定されたデスクトップPCのATX規格は現在でも現役ですが、策定当時とはパーツや廃熱事情が大きく変化しており新たな規格が作られた時期もありました。
しかし新たな規格へ移行することなく、同じATX規格でも上下を逆にした倒立レイアウトと呼ばれるPCケースやゲーミングPCが増えてきました。そこで今回は倒立レイアウト採用ゲーミングPCのメリットについてご紹介します。
ATX規格の後継だったはずのBTXは規格を作ったIntel自信が普及を諦めた
ATX規格が作られた頃のCPUやGPUの発熱量は非常に少なく、小さなヒートシンクを小さなファンで冷却できていました。しかし世代を重ねるごとに性能が上がり続けた一方で廃熱が大きくなり、熱暴走問題が顕著化していきました。
特大サイズのケースファンやサイドパネルからも外気を取り込むなど各メーカーが改良を進める中、Intelはより効率的な冷却を目指したBTX規格を策定しました。B
TX規格ではCPUファンとケースファンを共通化することで外気を効率的に用いる方法が採用されましたが、マザーボードとPCケースを丸ごと買い換える必要があり普及しませんでした。やがて新しい世代のCPUで廃熱問題が解消されるとIntel自信がBTX規格を諦め、ATX規格へ逆戻りしました。
ATX規格のゲーミングPCは廃熱効率が悪い
ATX規格ではグラフィックボードが一番奥の下部にレイアウトされており、外気を取り込みにくく他のパーツからの廃熱による影響を受けやすいという欠点があります。
これを解決するために全面に金属製メッシュを採用したPCケース等がリリースされています。しかし、ホコリが溜まりやすく騒音も抑えにくいため万人受けしません。またグラフィックボードは上下が逆になり、GPUの真下から冷却するためわずかに冷却効率が落ちてしまいます。
煙突構造とマザーボードの上下反転により冷却効率を上げた倒立レイアウトの登場
ゲーミングPCではCPUとGPUの廃熱が極端に多く、最も負荷のかかるグラフィックボードの冷却は重要です。そこでATX規格のマザーボードをひっくり返し、グラフィックボードが上向き且つ高い場所へ設置できる倒立レイアウトが誕生しました。
倒立レイアウトでは天板に排気口を採用した煙突向上により、グラフィックボードの廃熱が直接PCケース上部から逃げる仕組みが一般的です。さらに電源ユニットは壁で仕切られた最下部にレイアウトすることで他パーツの廃熱から影響を受けにくくしています。
この構造によりATX規格のマザーボードでも効率的な廃熱を目指した倒立レイアウトはゆっくりではありますが普及し続けています。
倒立レイアウトへ変更するにはPCケースの買い換えが必要
PCケースを買い換えれば既存のパソコンを倒立レイアウト化することができます。製品としてはまだまだ種類が少ないものの、マザーボード含め内部パーツは全て流用できるため低コストでアップグレードできる点は魅力的です。
グラフィックボード状に配線が被さらないようにケーブル類は工夫が求められる
ATX規格のマザーボードを上下反転させるとグラフィックボードの上にフロントパネル用のオーディオケーブルやUSBケーブルはもちろん、電源ボタンやLEDランプの配線が位置します。
通常ならケース下にケーブルを這わせても問題ありませんが、倒立レイアウトではたるんだケーブル類がグラフィックボードのファンへ接触しないように工夫が求められます。結束バンドの使用はもちろん、マザーボードの裏側をはわせて接続するなど工夫が必須です。
まとめ
倒立レイアウトはATX規格の欠点を補う画期的な方法ですが、排気をPCケース内に放出しない水冷式パソコンでの効果は限定的です。しかしPCケース内の廃熱問題解決や静音化を試みるなら倒立レイアウトは理にかなった選択であることは間違いありません。
もしゲーミングPCの放熱課題に悩んでいるならPCケースを倒立レイアウトタイプへ変えるという挑戦も選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょう。